「経営者の退職金、何も準備してない」と気づいた日
顧問税理士との面談で、ふと聞かれたことがある。
「社長、ご自身の退職金って何か準備されてますか?」
会社員時代は当たり前にあった退職金制度。
でも個人事業主や一人社長になった瞬間、それは「自分で用意しないと存在しないもの」に変わる。
恥ずかしながら、そのときまで深く考えたことがなかった。
この記事は「小規模企業共済」と「iDeCo」、どちらも個人事業主・社長が自分で退職金・老後資金を積み立てられる代表的な制度を、実際の数字で比較する記事だ。 どちらか一方を選ぶ話ではなく、併用も視野に入れて考えてほしい。
なお2026年12月には、iDeCoの個人事業主の掛金上限を月6.8万円から7.5万円へ引き上げる改正が予定されている(拠出への反映は2027年1月分からとされる)。これは2026年7月時点の報道・専門家解説にもとづく情報であり、正式な施行時期・金額は今後変更される可能性がある。
最新情報は厚生労働省・国民年金基金連合会の公式発表を確認してほしい。それでも、制度を見直すにはちょうどいいタイミングと言えそうだ。
あらかじめ断っておくと、この記事は特定の金融商品の売買を勧めるものではない。
掛金は「将来受け取る自分の資産」であり、単なる節税テクニックではなく、老後・廃業後の生活を支える備えとしての性質があることを前提に読み進めてほしい。
小規模企業共済とは:経営者・個人事業主のための退職金制度
- 商業・サービス業40%(40%)
- 製造業・建設業30%(30%)
- その他30%(30%)
データを表で見る
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 商業・サービス業 | 40% |
| 製造業・建設業 | 30% |
| その他 | 30% |
小規模企業共済の累計加入者数(中小機構公表資料より、在籍件数150万件超)
小規模企業共済は、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する、小規模企業の経営者・役員・個人事業主のための積立制度だ。
会社員の退職金にあたるものを、自分で積み立てて用意するイメージに近い。
中小企業庁の資料(令和6年1月)によると、累計加入者数は約160万人、在籍件数は150万件を超えている。
業種別では商業・サービス業が全体の約4割を占め、製造業・建設業が約3割、残りがその他の業種という構成になっている。
私自身、この制度の存在を知ったのは開業から2年ほど経ってからだった。
周りの個人事業主仲間に聞いても「名前は聞いたことあるけど詳しくは知らない」という人が意外と多く、認知度の割に加入が後回しにされがちな制度だと感じる。
掛金は月1,000円〜7万円の範囲で、500円単位で自由に設定・増減できる。
掛金は全額が所得控除の対象になり、これは国税庁のタックスアンサーNo.1135「小規模企業共済等掛金控除」で確認できる制度上の事実だ。
iDeCoとは:自分で運用する私的年金制度
データを表で見る
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 小規模企業共済 | 84万円 |
| iDeCo | 81.6万円 |
| 併用時合計 | 165.6万円 |
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を出し、自分で運用商品を選んで運用する私的年金制度だ。
運用の成果によって将来受け取る金額が変わる点が、小規模企業共済との大きな違いになる。
個人事業主(第1号被保険者)の場合、現行の掛金上限は月6.8万円(年81.6万円、国民年金基金の掛金と合算)。
これが2026年12月に月7.5万円へ引き上げられる改正が予定されている(※)。
iDeCoも掛金は全額所得控除の対象になる。
ただし小規模企業共済と違い、iDeCoには口座管理手数料がかかる。
加入時の手数料に加え、毎月の口座管理手数料が運営管理機関(証券会社・銀行等)ごとに異なる金額でかかり続ける。手数料は金融機関によって差があるため、加入前に必ず比較することをおすすめする。
正直、iDeCoを始めたばかりの頃は「毎月数百円くらいの手数料、大した額じゃないだろう」と軽く見ていた。
でも20年、30年と積み立てる制度だと考えると、その差は無視できない金額になっていく。
両制度を5つの軸で比較する
競合記事を見ていても、この比較が一番読者の知りたいところだと感じる。
中小機構公式サイトでも、両制度の違いを軸ごとに整理して説明している。
| 比較軸 | 小規模企業共済 | iDeCo |
|---|---|---|
| 掛金上限(個人事業主) | 月7万円(年84万円) | 月6.8万円・年81.6万円(2026年12月に月7.5万円へ引き上げ予定※) |
| 手数料 | 基本的にかからない | 加入時手数料+毎月の口座管理手数料 |
| 受取時の税制優遇 | 退職所得控除・公的年金等控除の対象 | 同じく退職所得控除・公的年金等控除の対象 |
| 資金の流動性 | 契約者貸付制度があり、事業資金として借入可能 | 原則60歳まで引き出せない |
| 廃業・退職時の扱い | 廃業時に共済金を受け取れる(任意解約は元本割れの可能性あり) | 転職・退職に関わらず口座は継続、受給開始年齢まで待つ |
※iDeCo掛金上限引き上げについては、前述の通り正式な施行時期・金額は今後変更される可能性がある。
この表で個人的に一番差を感じるのは「資金の流動性」だ。小規模企業共済には契約者貸付制度があり、事業資金が急に必要になったときに借り入れできる。
iDeCoは原則60歳まで引き出せないので、この違いは事業を続けるうえで意外と重要だと思う。
一方で受取時の税制優遇は、どちらも退職所得控除・公的年金等控除の対象になるという点で共通している。
ただし実際の控除額は加入期間・受取方法(一時金か分割か)によって変わるため、「どちらが得か」を一概に断定はできない。
併用のメリットとシミュレーション例

両制度は併用が可能だ。
中小機構公式サイトでも「小規模企業共済とiDeCoは併用できる?」というページで、この点を明確に案内している。
仮に、個人事業主が小規模企業共済(月7万円)とiDeCo(現行の月6.8万円)を上限まで併用したとすると、年間の掛金合計は165.6万円になる。
これがすべて所得控除の対象になるという試算だ(実際の税負担軽減額は、事業所得の水準や他の控除・税率区分によって変わるため、ここでは「掛金合計としての試算」にとどめる)。
2026年12月に予定されているiDeCoの上限引き上げ(月7.5万円・※)が実現すれば、併用時の年間掛金合計はさらに増える計算になる。
とはいえ掛金を増やせば増やすほど得、というわけではない。手元に残す事業資金とのバランスを考えて、無理のない範囲で設定することが大切だ。
私が実際に相談したケースでは、「まず小規模企業共済を月3万円で始め、事業の資金繰りに余裕が出てきたらiDeCoも並行して始める」という段階的な進め方を勧められた。
両方いきなり上限まで積み立てるより、現実的だと感じている。
まとめ:どちらか一方ではなく、自分の事業に合う組み合わせを考える
小規模企業共済とiDeCoは、どちらも個人事業主・社長が自分で老後資金・退職金を用意するための制度だ。
掛金上限・手数料・資金の流動性・廃業時の扱いなど、それぞれ性質が異なるため、単純にどちらが優れているとは言い切れない。
- 事業資金の柔軟性を重視するなら、契約者貸付制度がある小規模企業共済を優先しやすい
- 運用による資産形成も視野に入れたいなら、iDeCoを組み合わせる価値がある
- どちらも掛金は将来受け取る自分の資産であり、単なる節税ではなく老後・廃業後の備えである点は忘れないようにしたい
この記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、両制度の仕組みを比較したものにすぎない。
今日からできる一歩として、まずは中小機構公式サイトと国税庁のタックスアンサーで、自分の掛金上限と控除額の目安を一度確認してみてほしい。
実際の加入判断は、税理士等の専門家にも相談したうえで進めることをおすすめする。
出典・参考
一次情報(官公庁・公的機関)
その他参考記事(民間コラム・メディア)
以下は民間企業・専門家によるコラム記事であり、一次情報(官公庁発表)ではありません。
特にiDeCo掛金上限引き上げに関する記述は、これらの報道・解説記事を参考にしたものであり、正式な制度確定情報ではない点にご留意ください。
- マネイロメディア「iDeCoと小規模企業共済の違いを表で徹底比較」
- ソリマチ「個人事業主の小規模企業共済とiDeCo」
- 道濟会計事務所「小規模企業共済2026」
- 田澤壱高税理士事務所「個人事業主のiDeCo出口戦略2026」
本記事は小規模企業共済とiDeCoの制度・仕組みを比較する教育的コンテンツであり、特定の金融商品・サービスの利用を保証・推奨するものではありません。
数値は調査時点(2026年7月)の公表情報にもとづくものであり、税制・制度は改正される可能性があるため、実際の加入・掛金設定にあたっては各制度の公式サイトおよび税理士等の専門家に確認のうえご判断ください。





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